ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

貴公子は緑陰の香りではない3

猫日記253。
失敗しない店選び18。
貴公子のいる日常6。
夏のノスタルジア20。







そのお花屋さんは大通りに面したテナントの中のひとつだった。



しかし、



花の気配もせず、
人の気配もせず、
看板もない。



唯一ガラスのすぐ向こうに貴公子のごとき美猫がいる。




ガラスに近づくと、かすかに緑陰の香りがした。
(しかし美猫由来ではない。)








「ここはほとんど私の趣味でやってるような店なんだよ。」


オーナーさんは語る。


「店舗兼事務所。自分の拠点みたいな感じかな。」


それなのに、固定のお客さんは結構抱えてるらしい。
お店持つ前からずっとお花業界にいるのだとか。





オーナーさんは、お花関係のお仲間さんとなにか一緒に別の仕事もしてるみたいなの。
そっちがメインなんだそうだ。


でも、ここのお店の定休日は週1日。
それ以外基本毎日営業している。


たまにお店開いてても扉が閉まってる事がある。
そんな時は固定のお客さんのとこに配達に行ってるのだそうだ。
その時には扉には緊急連絡先が掲げられ、ガラスのすぐ近くでN貴公子が店番する。





このお店の営業時間は短い。
午前中にシャッターは開いてるけど、
だいたい昼手前くらいまでお店自体は閉まっている。



ある日、午前8時台にお店の前を通りかかったら、
お店の奥の方で見知らぬマダムが座ってて、そのすぐ横でN貴公子が朝ご飯を食べていた。
私が覗いてると、マダムが会釈したので私も会釈を返した。
N貴公子は口の周りをペロリと舐めながら振り返ったけど、
顔がかなり真剣だったので私は邪魔しないように立ち去った。



橘 (奥様・・・?かな。)



そのマダムはすぐお向かいの蕎麦屋のマダムだった。
蕎麦屋と言っても、もう店は畳んでるらしく営業している気配はない。
一戸建ての上の方にうっすら看板の名残があるだけだ。


蕎麦屋のマダム、N貴公子のご飯あげるのに協力してくれてるんだって。
オーナーさんがお店に来てない時間帯でもシャッター開いてるのはこのマダムのおかげだったらしい。



そしてこのお店の閉店時間は早い。
19時くらいまで開いている事もあるけれど、
だいたいいつも18時にはシャッターが閉まっている。
日によっては17時にはもうシャッター閉めてる事もある。



しかし、ある日20時台に偶然お店の前を通りかかったらシャッターが半分開いていた。
奥の方に明かりがついていたので、誰かいたのかもしれない。
N貴公子もガラスの近くにいた。
私が駆け寄ると、




N貴公子 「ニャア。」





話しかけられた・・・!




N貴公子「ニャア。」




しかも私のすぐ近くまで来てガラス越しに頭を擦りつけている・・・!




N貴公子「ニャー!」



さらに私の目の前を行ったり来たり、高いところにのぼったり床におりたりしながら
いろんなところに顔を擦りつけながら、




N貴公子 「ニャア!!」




私を見ながら話しかかけている・・・!!




※ほとんど猫に好かれる事がない人生である為、未知の感覚。※





N貴公子何それ!!すっごい可愛いんですけど・・・!!



橘 (あっ・・・でもN貴公子は幼少時からこのお店で接客と営業しているからそれかもしれない。)

↑ネガティブ。




N貴公子 「ニャアン。」


めっちゃ営業してくるー!!
営業時間外なのにー。



私はその日しばらく立ち去れなかった。