ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

夏の日の100円

夏のノスタルジア12。




夏になると、100円見るたびに思い出すことがあるの。







あれは小学校のたしか4~5年生くらいだったと思うんだけど、
小学生橘は環境整備委員会だった。


花壇の水やりとかが主な仕事だったんだけど、
夏休み前最後の委員会で、担当の先生が気になる事を言ったの。。



「夏休み期間はお盆期間以外は先生も学校来てる時に水やりできるけど、
お盆期間は水やりする人がいなくなるから・・・。」








夏休みになった。



じりじりじり・・・。

毎日暑かった。


小学生橘 (花壇の花大丈夫かな・・・。)







お盆になった。



朝ご飯の時。


母橘 「宿題ちゃんとやりなさいよ。」

小学生橘 「今日は委員会の仕事で学校行ってくる。」

母橘 「(お盆なのに・・・?)あ、そう・・・。気を付けて行ってきなさい。」




お盆で誰も水やりしなかったら花が枯れてしまう。




早速出かける小学生橘。
花に水やる時はあんまり日が高くないうちがいいから急いだ。


じりじりじり・・・。


まだ朝なのに相当暑かった。






小学校に着くと、開いていたけど人の気配はしなかった。



小学生橘 (花・・・。)



やっぱり土が乾いている。
小学生橘は早速ホースを掴んだ。



ザー・・・。


夢中で水やりしてたら・・・。

少し離れたところで誰かがもうひとつのホースで水やりしてる音が聞こえ始めた。



小学生橘 (用務員さん・・・!)



用務員のムッシュだった。



それからの数十分、お互いに無言で花に水やりする時間となった。








小学生橘 (暑い・・・。)



どんどん太陽が昇っていく中、ひたすら花壇に水かけた。



小学生橘 (もしかして、私がこなくても大丈夫だったのかも・・・。)



もしかしなくても、たぶんこれ小学生橘が来なくても大丈夫だったやつ。
なんで委員会の先生はあんな意味深な事を言ったのか。
てうか普通に考えて誰かしらいるはずなのに
何故小学生橘は気づかなかったのか。






ほぼ全部の花壇の水やりが出来たなという時、
用務員さんは水をとめてホースを元通りまとめてどこかに行ってしまった。



小学生橘 (とりあえず水やりは出来た。)


小学生橘も蛇口を捻った。


ホースと格闘してから帰ろうと出口に向かったら・・・。






用務員さんがやってきた。


小学生橘 (?)


用務員さんは手を差し出して、何かを渡そうとした。



用務員さん 「あんた、がんばったからこれやるよ。」




受け取ると、それは100円玉だった。




用務員さん 「帰りにアイスでも買って食べなさい。」


小学生橘 「ありがとうございます・・・。」





100円渡すと、用務員さんは行ってしまった。






小学生橘 (すごい。100円もらっちゃった・・・。)


校門に向かう途中、しげしげと手の中の100円玉を見つめる。


小学生橘 (何買おう。やっぱりアイスかな。)


校門出ながらアイスに思いを馳せる。


小学生橘 (あっでも学校帰りの買い食い禁止なんだった。)


不要なまじめさを発揮する小学生橘。


小学生橘 (あ・・・夏休みだった。)


そうそう、そうだよ。






歩きながらおもむろに100円を裏返すと・・・。



製造年月日が目に入った。




そこには私の誕生日が刻まれていた。



年・月・日、完全一致だった。



小学生橘 (すごい偶然・・・。)


用務員さんと話したのはその日が初めてだったし、
用務員さんはおそらく私の名前すら知らないだろう。
ましてや誕生日なんて知るはずない。
知ってても、それが刻まれた硬貨をその時持っているとは限らない。


小学生橘は、帰り道その100円がとても特別なものに思えてきた。



アイスは買わずにまっすぐ家に帰った。






この100円、宝石箱風小物入れに入れてその後10年くらい大切にとっておいたの。



でも、何かのタイミングで(たぶん引っ越しだろうな)お財布に紛れさせてしまった。
そして普通に何かのタイミングで使ってしまったと思われる。



あの用務員さんは軽いお小遣いのつもりでくれたのかもしれないけど、
思えばこれが、アルバイトしたり就職したりしてもらう初給料よりも先に得た人生初の報酬だった。


あの私の誕生日が刻まれた100円、今でも日本中を移動してるんだろうな。


夏になるたびにいつもそんな風に思い出してる。