夏のノスタルジア10。
8~9等身女子は、日本人だった。
ハーフでもクォーターでもない。
そもそも顔はがっつり日本人だし、骨格と体型だけ日本人離れしていた。
バレエとかのダンス系の何かはした事がないそうだ。
あの体型はほんとうに生まれ持ったものらしい。
たしかに幼少期からバレエやってる人でもプロのダンサーでもあそこまで綺麗な人はいない。
年齢は26歳。
私より2~3歳年上かな、と思っていたので
実は意外とずっとお姉さんだった。
可愛くて綺麗だったけど、さらに実年齢より若く見える。
お仕事は普通にお勤めの会社員だった。
(会社にあんな人いたらびっくりするわ!)
※全てヘアメイクさん情報。
顔合わせの日から数日後、全体ミーティングが開かれた。
「お疲れー。」
関係者全員参加してるし。
「お疲れ様でーす。」
関係ない手伝いの若人達も全員呼ばれてるし。
「お疲れさまです・・・。」
当然の様に私もいるし。
ほんとに疲れるわ・・・!!
ミーティングとか関係者だけでやればよくない?!
他皆帰らせてくれればそれでいいんだよ!!
私はげんなりしながら席についていた。
基本的にいつも体調悪くて元気ないからいつも通りだ。
↑万年具合悪い10代。
こうしてミーティングに参加するだけでもう気が重いのに、
さらにそこからショーの準備の進捗状況を発表したり
お互いに仕事で生かせそうな事を共有したりする。
まあ手伝いの私たちはだいたい聞いてるだけなんだけど。
19歳橘 (・・・。)←どうしたら円滑に契約切ってこの不毛な時間を人生から排除出来るか悩んでいる。
どさっ。
隣に他部署の幹部クラスの関係者の男性が座った。
19歳橘 (ひっ・・・。)
19歳橘はこの幹部クラスの男性が苦手だった。
口調もきついし、態度も高圧的だ。
19歳橘 (・・・。)
ダラダラダラ・・・。←見えない汗が流れる。
普段はこの人とほとんどかかわる事がないので無問題なのに、
なんでこの日はよりによって隣の席にいるんだよ。
少し離れたところにT田さんがいた。
「やっ」と手をあげて見せた。
私は会釈した。
T田さんは目を輝かせて、満足そうにしていた。
19歳橘 (・・・?)
何かあるの・・・?
そして相変わらず黒かった。
少しして社長が来て、幹部クラスの男性と反対側の私のすぐ近くに座った。
なにこれ私包囲されてない・・・?
社長が来たタイミングでミーティングが始まった。
何人かいる幹部クラスの人達がそれぞれ話をして、
T田さんが前に出て話す番になった。
T田さんは私の方を見て、にこっとすると前に出て行った。
T田さん、ほんとに黒いわ。
人ってあそこまで日焼け出来るものなの。
ほんとにあやしさ満点で、8~9等身女子さぞかし驚いたに違いないわ。
でも私がそんな風に思ってる事はぜったいにT田さんに悟られてはいけない。
本人だってそこまで自分があやしい見た目になってるだなんて思ってないだろうし。
T田さん 「みなさんお疲れ様です。こないだのモデル探しもお疲れ様でした。いやあーおかげですごくいいモデルが見つかったんだけど、
俺が最初に声掛けてたら、ぜったい来てくんなかったよあの人。橘さんが声掛けたからOKもらえたと思うんだよね。
俺さ、今こんな見た目してて超あやしいじゃん?」
本人気づいてたー!!!!
ダラダラダラ・・・。
ミーティング会場は爆笑がわき起こってたけど、
私は一人へんな汗が流れるのを感じていた。