殊勝モードに切り替わった後のこの人はあいかわらず気持ち悪かった。
ある日の事。
この人のオフィスに遊びに行ったら、この人がMACの前に座って作業していた。
私が、パソコンを買おうと思ってる、と言ったら、その人は愕然としていた。
「実はね、ちょうど今使ってるパソコンから新しいものに買い替えようと思ってたんだ。
それでいま使ってるのはうちのチビたち(子供たち)にあげるつもりだった。」
「へえー、そうなんですか。」
「橘さん、要るかい?」
「パソコンくれるんですか?」
「あげるよ。こんなにタイミングよく言われたら、もうしょうがない。
うちのチビたちにはまたの機会にするよ。」
私は考え込んだ。
「ちょっと考えさせてくだい。後日返事します。」
「いいよ、わかった。」
本人の子供達を差し置いて、赤の他人の私がもらう、というのもおかしな気がしたし、そもそも気持ち悪い。
なんでこんなに何でもかんでも私に捧げようとするんだ。
パソコンは自分で買う事にして、後日断った。
それに、欲しいのはパソコンじゃない。
この人と話していて、私の知らない事を教えてもらえるかもしれないと思って遊びに来ているのに、
その望みは薄いと気づきはじめていた。
この人では限界がある。
この頃からだんだん連絡を取らなくなっていった。
ほんとはもっと早い段階で切るべきだったと思っている。
そういえば、だんだん連絡取らなくなる前に、1回だけご飯奢ってもらったなあ。
ある日のこの人の仕事終わりの時間帯。
「今日は橘さんとご飯食べて帰るから夕飯要らないよ。」
奥さんに電話していた。
ていうか私の名前言えば通じるのか。
ちなみに奥さんとは面識ない。
この人だけじゃなくて、
なんでか私の知人になる人達のそれぞれの家族の中で私はよく知られた存在になる。
なので、会ったこともない人(知人の家族)から頂き物したりする。
で、その日はその人のオフィス近くの洋食屋さんでご飯食べた。
この人は、普段から私の肉嫌いを指摘していて、
この日も
「肉を食べなさい。」
と言っていたが、私は受け入れられなかった。
この人に、私の中での肉は美味しくないものという思い込みを覆すほどの説得力はなかった。