ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

弟子にされそうになった話<依頼その1編・中庭>

hotakatachibana2018-12-05

お茶をおかわりしていたとはいえ、すっかり話し込んでカフェで長居してしまった。


よし、出るぞ、とその人は言った。







カフェを出て1分ほど歩くと建物の吹き抜けの中庭に出た。レストランのテラス席も飛び出た中庭なので、ディナータイムを楽しむ人で賑わっていた。


テラス席とは別に、椅子がところどころにあって、空いている席を見つけて座ったら、今度はその人が鞄の中から用紙を数枚取り出した。


「本当はある程度親しくなってから渡してるものなんだけどな。」


用紙を受け取った。そこには、その人が仕事する時に軸としているというものが書かれていた。そして、俺の仕事はこれが全てだ、とも言っていた。


内容に目を通したけど、初見のものだった。



実はこれこそが、数年後に不思議なルートを通って私の人生を変えることになるものだった。内容は問題ではない。


重要なのは、その  ” キーワード ”  。


その人「これ知ってる?」


私は知らない、と言った。


その人「そうか。これはな、ネットで検索すれば簡単に出てくるんだよ。でも、ここに書かれた内容ほど高い精度のものはないよ。他のお客さんにもあげてるし、おまえにもやる。」


はあ・・・。私はそれほど内容にピンと来なかった。この時は、まさかこの内容のキーワード が後に自分の人生を変えるきっかけになるとは思いもしなかった。それも絶妙なタイミングで。


この当時であっても、すぐにネットで検索すれば、このキーワードをたどって、全く関係がないある情報にたどり着けたはず。でも、この時この人がそんなに大切にしているものを簡単に検索かけていいのかなという気持ちがあった。その後しばらく忘れていて、数年後のある時ふと思い出してもうどうでもいいやと思って検索してみたら、絶妙のタイミングだった。




ちなみに、本題である依頼内容についてあらためて面と向かって相談した。その事で少し話していたら、その人がふと言ったある事で、私は自分の脳がどんどんクリアになっていくのを感じた。


私は、それ、やりたい、やってみようかな、と伝えた。そしたらその人は、この後から私がやるべきこと、とる行動をひとつひとつ教えてくれた。


解決するきざしが見えた瞬間だった。






そこで一呼吸おいて、会話が途切れた。しばらくしてその人が口を開いた。


「なんでこの場所にしたか分かるか?」


私が摂食拒否したせいで美味しいお店にいけないからですか、と聞いてみた。


「違う。あそこ。」


視線の先には、滝と噴水の中間みたいな水が流れる場所があった。


(ああ・・。なるほど。)


「リラックスしてしゃべれただろ。」


はい、水の音は落ち着きますからね。


「問題解決しそうだろ。」


ええ、おかげさまで。よく私が過緊張の傾向があること分かりましたね。


「俺はなあ、おぬしのことはもう把握してるんだよ!!」



どうぞどうぞ。笑笑。
この人はとっても嬉しそうだった。



この人みたいな直に対・人間で仕事する凄腕の人であっても、時間が立てば立つほど、私をみていて整合性の取れなさに首をかしげるようになるだろう、と私はこの時予想した。把握した、と整合性がとれているうちに楽しんでもらえるならそれにこしたことはない。



また、私はこの人を見ていて分かったことがあった。

おそらくこの人には師匠と呼べる人がいる。そして今、この人が何を考えているか私にはわかった。


ディナータイムの賑わいの中、しばし会話が続いた。