ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

モデル発見記7

夏のノスタルジア9。




モデル達を全員ドレッサーに通して、各モデル一人ずつ担当のヘアメイクがついた。





この日は最初の顔合わせという事もあり、談笑しながら軽くメイクをしてみて、ショー当日の相談も軽くする。
(メイクはステージ用の派手な感じじゃなく、本人に似合ってかつ普通に街を歩けるもの)



ほとんどヘアメイクの人と話してるけど、たまに準備で外したタイミングで
他の関係者の人達が入れ替わり立ち替わりモデルのところまで挨拶しに行っていた。




他の手伝いの若い子達もモデルのところに行ってヘアメイクさんとのおしゃべりに加わったり、簡単な雑用を手伝ったりしていた。





コソリ。





19歳橘はバックヤードの隙間から覗いていた。




モデルさん達が並んで座っている中で、
8〜9等身女子は際立っていた。




19歳橘 (立ち姿も綺麗だったけど、座ってても綺麗。)←ノーギャラの辛さから立ち直った。





8〜9頭身女子、この人が1人いると他のモデルさん達が平凡に見える。






いや、こういう関係者の人達から声掛けられてモデル引き受けるくらいだから
皆キレイなんだろうけど、8〜9頭身女子がずば抜けて可愛かったから他がかすんで見える。




なんかもう骨格から違う。







日本人、ほんとに骨格が残念だ。
どれだけしなやかに筋肉を鍛えても、
どれだけダイエットしてほっそりしても、
もともとの生まれ持った骨格は基本的に変わらない。


幼い頃からバレエとかやって、
成長過程でなるべく細く長く身体を作ることは可能かもしれない。
でも、それも限度があるのだ。


19歳橘 (あんな人がバレエをやったら、さぞかしさぞかし•••。)←バックヤードで一人個人的な趣味に走る手伝いの若人。





あとは頭蓋骨。
日本人の頭蓋骨は、あまりかっこよくない。
髪の毛でカバーするしかない。


8〜9頭身女子は、頭の形がハッキリわかるヘアスタイルをしていなかったけど、
それでもほとんどの日本人とは違うという事が見てわかった。
もう、首から顔のあたりの感じが違うんだよね。


本人は、あんまり顔を全面に出したり髪をまとめたりといったヘアスタイルは
好まなそうな感じだったけど、もったいない。
すごく、美しいのに。






私がコッソリ表を観察している間にも、
モデルさん達のメイクとヘアセットが進んでいく。



この時、私は8〜9頭身女子を見ていて、確信した事がある。



8〜9頭身女子、この場にいるのがちょっと辛そうだ。
もちろん、それを表に出さない様にヘアメイクの人や関係者の人達の対応を笑顔でしてくれてるけど、
最初エントランスに現れた時に、何かを察知したような表情をしたのとその後の様子をずっと見てて、
ああやっぱりと思ってしまった。



それと同時に、こんな会社とかかわらせてしまって悪い事してしまったんじゃないかと思った。



”こんな会社”。


詳細は後日明らかに。





でも私、モデルはこの人にやって欲しかった。
でも、つなげるのはこんな会社。


モデルにはなって欲しいけど、この会社とかかわらせるのはなんか悪い様な気がする。


私の中でそんな葛藤が起こった。



一人でもんもんとしていたら、





「何やってんの?橘さん。」


関係者の一人から声掛けられた。


「そんな裏からこっそり見てないで、モデルさんとおしゃべりしてくれば?あの超可愛い人、橘さんがつかまえたモデルでしょ。」


19歳橘 「•••後で挨拶だけしにいこうとおもってました•••。」


関係者のひとは、ほんとに変わった子、とでもいわんばかりについと行ってしまった。








表の様子を伺ったら、8〜9頭身女子のまわりには誰もいなかった。駆け寄った。


19歳橘 「こんにちは。」

8〜9頭身女子 「あっ•••こんにちは!」



安心した様に笑顔になって挨拶してくれた。
それまでよっぽど居心地が悪かったらしい。
それに•••。

19歳橘 (もしかして、私とフィーリングが合っていらっしゃる•••?)






19歳橘 「今日は来てくださって、ありがとうございます。」

8〜9頭身 「いえ•••。」





それですぐバックヤードにまた引っ込んでしまった。
おしゃべりなんて、ほとんど初対面の人と何話していいかわからないよ。
それに、本来私はショーと関係ない人間なのに
モデルさんになれなれしくしてはいけない気がする。





こういう現場って、将来ヘアメイクの仕事を本格的に目指してる人とか
ショーとかモデルとかそういう華やかな仕事がしたい人にはうってつけかもしれないけど、
そうじゃない人にとってはどうしていいかわからない事ばかりなんだよ。


それに、
厳密に言うとノーギャラではないんだ。
働いた分の報酬は出る。
でも、手伝いの若人たちがしている普段の地味な仕事とは全く関係ないショーの準備とかはノーギャラ。


割りのいいバイトとか、他に探せばいっぱいあるのに、私を含めた何人かはなかなか辞められない。
すごく疎遠になりづらい雰囲気があった。それでもあっという間に辞めてった人多数だったけど。
(あたりまえだよ。拘束された時間を時給換算したら、最低賃金の半分以下になるようなとこだもん。)







モデルさん達は、それぞれキレイにヘアセットされて、
可愛くメイクが施されていた。




その日はモデルさん達を帰して、片付け、そして手伝いの私達もやっと解放された。