ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

イレギュラーな中国人3

シンガポールにいる間、
毎日このホステルのラウンジ(というか大広間)で朝ごはん食べてたんだけど、
そこで毎朝Sさんと話をした。


私日中は観光。
夜にホステルに戻った時はSさんに会う事はなかった。
(Sさんだいたい友達と出かけていた。)



Sさん、上海にいた頃は塾の先生してたんだって。
JTB辞めた後転職したのかな。


その後はバリにしばらくいて、
超楽しかったらしい。


そしてバリの後にシンガポール
ほんとは違う国に行く予定だったとかなんとか言ってた。マレーシア、だったかな。
だからか偶然のタイミングに驚いていた。



Sさんも私も、本来なら違う場所にいたはずだった。



私がこのホステルに流れ着いた日の約3ヶ月前にSさんがシンガポールにやって来たのだという。
そしてこのホステルを常宿にしてずっと同じ部屋に住んでるらしかった。
仕事はしていないみたいだった。



来たばかりの頃は知らない国で
知らない人達(しかもいろんな国の外国人3人)と相部屋で、超警戒してたんだって。
スーツケースも鍵かけるだけじゃなく、キーチェーンでベッドの足に括り付けていたそうだ。


私がやってきた頃には
ルームメイト3人と一緒に同じ顔触れでずっと生活してて
もうすっかり皆と友達、って言ってた。



Sさん 「そうだ、皆に紹介するよ。」



4人部屋に連れてってくれた。
私が使ってた1人部屋よりやや広いくらいで、
二段ベッドがふたつ。


北欧ぽい人や欧米の人と思われる人達、がいた。
わあー本物のプラチナブランドだ•••。



紹介してくれたけど、ルームメイトの皆さん
私にはあんまり関心なさそう。


それに、私Sさんとしゃべりたい。


少しして、またラウンジ(というか大広間)に2人で戻ってきた。



私が日本に来る事はないの?って聞いたら、
Sさんの様子が一瞬で変わった。
目線を下に落として、何か深く考え込んでいた。



何か様子がおかしい。


その日は特に深く考えずに、
観光に行った。









また次の日。


聞いてみた。



橘 「ところでSさんはなんで日本に来たくないの?」

Sさん「…。」


Sさんは無言でじろりと睨んだ。


橘「Sさんなんでよ。」



Sさん「嫌だ俺日本に行ったらいじめられる事件に巻き込まれる!!」



なんでー!!




私これ、その時は日本に存在するいじめの事を言ってるのかと思ってた。
日本人同士でもいじめ合うのに、外国人の自分はもっとと思ったんじゃないかと。



でも、たぶんこれ中国共産党とか関連だよね•••。
中国人のSさんが日本に来たら、契約書書かされてスパイ活動させられる。


Sさんは中国人だから、その辺の事情よくわかってたのかもしれない。
(当時の私はもちろんそんな事は微塵も知らない。)


Sさん、そういうの絶対拒否しそう。
同じスパイ活動させられるにしてもそこまでじゃない国にしか行かないんじゃないかな。


Sさんは権力に阿るのが好きじゃなさそうだし、
良識ある人だった。
自分が損をする事にはちゃんと警戒するけど、
他人を踏み躙ってまで自分の利得の為に何か出来る様な人じゃない。
ほんとは日本人じゃないの?






シンガポール最終日。

ホステルに宿泊者用のデスクトップパソコンがひとつあって、
自由に使っていいって言われたから
Sさんと2人で使いに行ったんだ。
このブログ見せたりしていろいろ楽しかった。




その後も
いろいろ話してて、
その時
ふと、Sさんが不思議な事を言った。



Sさん 「クリスチャン?」




不思議、と言ってもこれが初めてじゃない。
私、日本にいても初対面の人からクリスチャン?て聞かれる事が度々あった。



その度に


(ぜんっぜんわかんないんですけど。)


って思った。



私クロスモチーフのものなんて一切身につけてないし、
見た目も純日本人みたいななりしてるし、
お正月は初詣、お盆はお墓参り、クリスマスにはツリー飾ってケーキ食べる、
みたいな
典型的な日本人だったから無宗教だった。



だから、
Sさんに 

「橘さんてクリスチャンなの?」


って聞かれて、


(Sさん、ぜんっぜんわかんないよ。)



って思った。


そして
首を横に振る。






Sさん、最初から最後まで一貫してすごく親切だったけど、
最初は私の事を警戒していた。
朝ごはんの時もしばらく離れた席に座ってたし、
ぜったいへんな日本人だと思ってたと思う。


でも、何日めかには一緒に朝食バイキングのスイカ食べてたし、
いろんな話出来た。


最後の日の午前中にSさん、
橘さん、あなた声や雰囲気がすごくヤサシイね、と
目をきらきらさせて感動していた。


Sさん、日本人は皆こんな感じだよ。(中にはいじめる様な人もいるけど)
だから日本に来てよ、って言ったら、やはり日本に来る気はまるで無さそうだった。


Sさん、中国でずっと暮らしてて周り中国人ばかりという環境で生きてたら
日本人特有の優しい感じに接する事はなかったのかもしれない。


Sさん、中国人ぽくないし
Sさんこそすごく優しいのに、そんな環境辛すぎる。
だからバリとかシンガポールで暮らすようになったのかな。


ちなみにSさん、
そこまで私と友達になりたいと思ってなさそうだった。
でもすごく優しいから、無害なら誰に対しても歩み寄ってくれる様な人だ。


メールアドレス教えてってゆったら、
ノートパソコンはスーツケースにしまい込んでて
メールはほとんど開かないって言って
携帯番号教えてくれた。


え!超個人情報なんですけど。
フリーメールでよかったのに。
なんて人なの。


しかも
この日、チェックアウトしたら観光に行くって言ったら
Sさんのおかげで夕方のフライトの時間までフロントでスーツケース預かってもらえたの。


そうして日中は観光に行ってて、
夕方再度ホステルにスーツケース取りに行ったんだけど
やっぱりSさんに会えなかった。
その日の朝が最後だった。






これが、
マリーナベイサンズが建設中で
マーライオンも改修中だった時代の
シンガポールで起こった出来事。