イタリア・フランス回想記(2003年12月27日〜2004年1月1日)vol.31です。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
そして動き始めたバスの窓から再び外に広がる黒い空間を見ていた(写真は日中のベニス)。
ふと、目が合う。
そのセニョールは、どっしりとした雰囲気で、コートを着込んで、少し年配のサラリーマン風だった。
仕事帰りなのだろう。
目が合うのでお互いに微笑み合った。
すると間もなくセニョールがイタリア語で何か話しかけてきた。
イタリア語はまったく理解できないよ。
せめて英語でとお願いしたら、そのセニョールは英語もけっこう話せるようだった。
しかし早すぎて聞き取れない。じゃあなんならいいというのだ。そりゃ日本語に決まってる。
私が理解に苦しんでいると、セニョールはゆっくりとひとつひとつ話してくれた。
このセニョール、気さくで親切そうでとってもいい人なんだが、あえて欠けてるところをあげるとすればそれは日本語が話せないことだ!私はこの人が日本語も話せないものかと淡い期待を抱きながら会話した。
「これからどこかへ行くのかい?」
えっとー・・・ムラーノへ・・・。
「ムラーノ?!なんだって?!今から行っても何もないよ!!まっくらさ!!」
とセニョールは理解にくるしんでいるようだった。
何もない?まっくら?なんで・・・?
「わかるかい?わかってないな!!次のバス停で乗り換えだ!!いいね?!」
私はムラーノへ行くことをあきらめきれなかったのだが、このセニョールが
乗り換えだ、乗り換えだ、と言うので、友人がデッキにいることを伝え、待ってもらった。
「なんかあのセニョールが乗り換えしなさいって言うんだけど!!今からムラーノ行っても何も
ないって!まっくらだって!!」
「えっ。何何?!降りるの?!」
「とにかくあのセニョールについて行くべきみたいよ!!」
バタバタバタ。
「こっちこっち。」
とセニョールが案内してくれるまま降りて、違うバスに乗り換えて、そしてまた降りたらサンタルチア駅だった。
戻ってきてしまった!