ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

弟子にされそうになった話<依頼その1編・まさにその瞬間>

hotakatachibana2018-12-07

駅までの道すがら、まだ話は続いたけど、エスカレーターのところで会話が途切れた。私はその人の後からついて乗って、周囲に広がるフリースペースやテラスで夜の時間を楽しむ人を見ながら上昇移動。






突然その人は振り向いて、ついにとんでもないことを言い出した!!


「俺はなあ、おまえを一流のコンサルタントに育てる事にした!!」



育たないです。



何この予想通りの展開。しかも「した!!」って・・・もう決まってるのか!!

私の意見は・・・!!私の意見は・・・!?



私が無関心そうにしていると(実際ほんとに無関心)、その人は一瞬寂しそうな表情になってため息をついた。エスカレーターの終わりのところに来るとすたすた歩いて言ってしまった。







私が7センチヒールでがんばって後をついていくと、その人は言った。



「どういう経路で帰るの。」

「私は電車ですが・・・タクシーで帰るんですか?」

「いや、俺も電車で帰る。一緒に帰ろう。路線合わせるから。」





その人と私は自宅の方向はやや同じだけど、便利な路線が違った。その人はわざわざ遠回りして私と同じ路線で帰ると言った。タクシー呼べばいいのに。そして一緒に帰ってもコンサルタントにはならないです。






ホームで待っている時にもまだ会話が続いていた。その流れで、私はふといつも思っていることを言った。



「自分で何か始めて仕事してる人は、大変かもしれないけど幸せだと思いますよ。世の中の人達、特に会社員の人達見てると、自分の人生を軽く考えてる人が多すぎる。時間を無駄にしていることになんの感情もともなってないし、そもそも気づいていない。人の一生はそんなに簡単にないがしろにしていいものじゃないですよ。」




するとその人は、特徴的な澄みわたった目をわずかに揺らせて、一瞬ふと考え込んでから、何かを思い出した様に言った。


「あんたと出会えてよかったよ。」


なんかのセリフみたいだが、心底そう思っている様子だった。でもコンサルタントにはならないです。


電車がきた。乗り込んだら、突然人が押し寄せてきて車内はぎゅうぎゅう詰めになった。この人は、なるべく私に触らないようにすごく気をつかっていたけど、人口密度が高すぎてもう無理だった。もうパンとバターだよ。あきらめてくださいぺたー。






その人は人だかりに押されて相当つらそうだった。


「大丈夫か?ちなみに俺はもう無理だ。普段こんなとこ乗らないからな。」



そうでしょうそうでしょう。おとなしくタクシーで帰ればよかったものを。途中下車も大変だと思うので、あきらめて最寄り駅までがんばってください。ついでに私をコンサルタントにすることもあきらめてください。



ちなみに私は押し花になった。しかし電車降りて水でも飲んだら元に戻るから大丈夫。




そうして、電車の中で圧縮されながらその日の夜は過ぎていった。