ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

怪獣の洗礼

猫日記219。


#姉の重すぎる愛と王子カルピスの憂鬱な日常4




そういえばカルピスは、もらわれてきたばかりの頃は王子だって気づかなかった。

両掌におさまるくらいちっちゃくて、ころころして、
でも直線的に走り回って家族には目もくれず、
ひとりでずっと遊んでるような子だった。
あの頃が一番運動量多かったな。
そして怪獣の様に狂暴だった。




カルピスと初めて対面した時の事は今でもよく覚えている。



ある日学校から帰ると、白っぽい毛玉が走り回っていた。
良く見ると、ところどころほんのり茶色っぽい。
手足、しっぽ、耳、そして鼻先がちょぼっと茶色くすすけている・・・。
そして目が青い。



「わあ・・・この子シャム猫・・・?!」



私は心が躍った。
小学生の時、シャム猫を飼いたいと思っていた。


「ねえ飼うの?預かってるの?飼うの?」


私が聞くと、皆が今日からうちの子という雰囲気を醸し出していた。
夢が叶った瞬間だった。




「ねえ、抱っこしてみていい?」


その毛玉の直線走行を遮って手を伸ばしたら、
皆が”あっ・・・”という顔をした。


がじがじがじがじ



「いてて・・・痛い痛い・・・!!」



かじられた。


皆口々に、この子かじるんだってば・・・、かじられるよ!と言っていた。

皆私が帰ってくる前に、このちっちゃな怪獣の洗礼を既に受けていた。






それでも私はこの毛玉のようなシャム猫を抱っこして頬ずりした。
手にかじりつく毛玉。
しかも結構手加減なしだ。



皆が、かじられるから離した方がいいよ、みたいな事言っていた。


「この子可愛いよ!!名前あるの?」←空気読めないやつ。

がじがじがじがじ。

「カルピス!今日は一緒に寝よう!!」←かじられても気にしない。



かじられるからだめ!!と皆が言った。
家族皆、カルピスという名前にも一緒に寝る事にも難色を示していた。



ちなみに当時、カルピスの姿を見てこれを連想してカルピスと名付けたわけではない。


不思議なんだけど、カルピスがうちにやってくる1週間前くらいから
「カルピス」というキーワードが頭の中にずっとあって、
この小さな怪獣を見た時、「この子はカルピスだ」と思っただけなのだ。



それにしても、赤ちゃん子猫時代のカルピスはほんとに狂暴だった。
のちの大人しい王子からは考えられない怪獣ぶりだった。



兄弟たちとじゃれあう事なく引き離されたから、
加減を知らないままだったのかと思ってたんだけど、
もしかしたらあれは、



”王子である僕に触るな!!”



って事だったのかもしれない。





早速家にあったブルーのベルベットの細いリボンに小さな鈴を通して
首に結んであげた。



かわいい・・・!!!



しかしカルピスはこれが大嫌いで、
いつも居心地悪そうにしていた。
暴れまわって、鈴が首の後ろに回り、リボンが横にずれ、
その都度なおしてあげてもすぐずれる。
しまいには自分ではずしていた。


怪獣時代から王子様の扱いは難しかった。


しかし、とにかく皆から声をかけられる可愛い子だった。
そうしていつの頃からかかじらなくなっていった。