そんなある日、身体弱い派遣社員女性が、襟つきの白いブラウスに黒のタイトスカート、ベージュのシアータイツ、黒の革のパンプスといういでたちで出勤してきた。しかもメイクもばっちりしていて、普段とあまりに違うので私はぎょっとした。
何が起こったの?そして今日何があるの・・・?
この身体弱い派遣社員女性は、普段は無印良品とかスタジオクリップとかで売ってそうなお洋服ばかり着てる人で、それがパジャマか部屋着みたいで違和感があった。組合せでそう見えたのか、この人が着るとそう見えたのかはわからない。一つ一つは変じゃないのに。あとこの人普段はまるきりノーメイクだった。
特にスーツ指定の職場ではなかったので、一瞬、急に職場の服装の基準が変わってしまったのか、もしくはこの日だけスーツ指定になっていて自分だけ知らなかったのかと思ったが、他の人はいつも通りだった。
部署の他の人は特に気にしてないようだった。唯一、2次研修してくれた正社員の人が何かを察していた。
この身体弱い派遣社員女性、昼過ぎには早退してしまった。
おそらく、どこかの会社に面接受けに行ったんだと思う。季節が夏だったから、白ブラウス姿だったけど、おそらくロッカーには黒のジャケットが入っていたんでしょう。
この人に、自分で面接を申し込んで一人で企業に乗り込んで採用を勝ち取るという一連の流れはおそらく無理だから、派遣会社の人に連れられて、派遣会社から紹介された会社に行ったのだろう。
それはいいんだけど、会社や周りの人に対してやや失礼な気がする。
違う職場へ行くことを考えて行動するのも、在籍中に他社に面接に行くことも別に普通の事だけど、あからさまにこれから面接を受けに行くといういでたちで出勤してきて早退していくというのはいかがなものかと思ってしまう。
それが普通の世の中なのか?もしそうだとしても、人間の心理として、なんとなく気がひけるというのが私の感覚なんだが。というか私の場合、少しでも退職の意思を見せようものなら辞めさせてもらえない&根掘り葉掘り聞かれるので、絶対に知られたくないと思ってしまう。
この人は普段から体調不良で欠勤ばかりしているから、その流れでもう1日休んだところでもう誰も何とも思わなそうなのに。しかもこの人の退職後の事なんて誰も興味がない。
ちなみに、少し離れたところに座っている部長も察した様子だった。
この部長は、私に圧迫面接し、採用してくれた人だが、それ以来特にかかわりはない。しかしこの時ばかりは部長にやや同情してしまった。