先日、まだ夏の暑さがのぼりきらない早朝の時のこと。
約束の時間まで少しあったので、のんびりして歩いていたの。それで榊の木の下の石の階段のところを歩いていた。
石段を一段降りようとした時、榊の木が目についた。6月には、この榊の木は花が満開だった。とても可愛らしい花で、いい匂いがした。
そして、石段の上にも花がたくさん落ちていたなあと思い出し、足を一歩踏み出しながら、下をみたら!!
「うっ!!!」
私の奇声があたりに響いた。
なんと私の足が全体重をもって降りようとしていたまさにその場所にはヘビがいたのだ!!!
私はあわてて足を引っ込め、身を引いた。
私もかなり驚いたがヘビも私の奇声で体をビクッとさせていた。でもすぐにお互いに敵意がないことに気付いた。
とても大人しそうなヘビで、ちょうど石段を横断中に私がやってきて踏まれそうになったらしい。私がちょうど足を降ろそうとした位置にふたつおりみたいな格好でとどまっていた。休憩中だったのか?
私がやや離れた位置からヘビを見ていると、ヘビはゆっくりと移動し始めた。その時気付いたのだが、このヘビ、とても美しいのだ。全身がうっすらグリーンがかっていて模様はなく、細く華奢な体は少し長い。頭は小さくて目は優しげな印象だ。
そしてその動きに目を奪われた。少しもニョロニョロしていなく、新鮮な動きに見えた。優雅な感じさえした。
私は正直、ヘビとかトカゲはかなり無理。大の苦手なのだが、このきれいなヘビのことは少し見ていたいと思った。あまり近づくとお互いに恐怖感を感じるので、一定の距離を保ったままヘビの後を追った。
ヘビはゆっくりと優雅に端にそって進んでいた。私がついてきていることに気付いているらしかったが、必要以上に近づかないのであまり気にしていないようだ。
こんな優しい印象のヘビは初めてだった。優雅な動きに、見ててどきどきした。そして踏まなくてほんとによかったと思った。
榊の木がなかったら・・・。
もし榊の木を見て6月の花を思い出さなかったら、踏んでしまっていた。そう思ったら、違う意味で心臓がどきどきした。
でも、地面にコツコツと足音を響かせ、足を振りかざし、ヘビにとっては十分恐怖だったろう。せっかくの朝の時間を邪魔してしまい、申し訳なく思った。心の中で謝りながら動きを追ってたら、ヘビはとうとう小さな石のところまできた。そして地面と石の間の少しの隙間から中に入ってしまった。
しっぽだけが出てる状態になったとき、至近距離まで近付いてみた。すると、あっというまに全部中に入ってしまった。そこで私ははっと気付いたのだ。
約束の時間に遅刻していることを。
優雅さのカケラもなく走ったさ。