ぽとりと落ちたノスタルジア

最近の日記は数年前の日記を書いている。時々リアルタイム日記を挟みます。

*見えない足かせ

hotakatachibana2006-11-07

アルケミストを読み解くその3です。


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アルケミストp29からの抜粋です。


〜〜〜老人は、広場の一角にある自分の店のショーウィンドウの横に立っているパン屋を指した。

「あの男も、子供の時は旅をしたがっていた。しかし、まずパン屋の店を買い、お金をためることにした。そして年をとったら、アフリカに行って一ヶ月過ごすつもりだ。人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ」

「羊飼いになればよかったのに」と少年は言った。

「そう、彼はそのことも考えたよ」と老人は言った。「しかし、パン屋の方が羊飼いより立派な仕事だと思ったのさ。パン屋は自分の店が持てる。しかし羊飼いは外で寝なくてはならないからね。親たちは娘を羊飼いに嫁にやるより、パン屋にやりたがるものさ。結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が大切になってしまうのだ」〜〜〜





ものごとを成就させるためには「気と機が熟す」のを待ち、それがいつなのか見極めることが非常に大切です。でもこのパン屋は、パン屋を持とうと思った動機が自分を夢から遠ざけてしまった。そう選択した時点で気も機ももう熟さないのです。でも本人がそうしたくてそうしたのだから、これはこれでいいのです。


まわりを見渡せば、このパン屋のような人がたくさんいます。しかも皆共通してることは「もし〜でなかったら」と言った類の言い訳をものすごく自信を持って大量に所有しているということです。

もし、もっとお金があったら
もし、もっと時間があったら
もし、理想的な協力者がいたら
もし、あの人と出会っていなければ
もし、もっと体力があったら

etc・・・

たしかに本人にしてみれば事実という部分もあるかもしれないし、私だってこういう言い訳をしたい。でもこんなこと言ったって無意味なのだと知っています。過去と他人は変えられないのです。そしてそれは自分で選択してきた結果なので、未来と自分を変えるしかない。未来と自分は変われます。


また、このパン屋のように「とりあえず〜してから、本当にやりたいことをやる」という人をよく見るのですが、こういう場合、必ずと言っていいほどその人の人生は思い通りに展開していきません。その理由にも気づいてません。いや、気づきたくないだけなのかも。こういう人は心のどこかで「自分が本当にしたいことが自分には無理」なことを知っている、もしくは無理だと思っているのです。そのことに気づきたくないがために、もしくは無理だと思っているために、どうどう巡りをしてしまう。でもそういう人は、そのうまくいかない状態が実は好きなのです。だから抜け出したいのに抜け出せないのです。かわいそうだけど、それも本人が選択したことなのだと思います。



自分で作り出した足かせに縛られていることに気づいたら、もしかしたらパン屋もアフリカへ行けるかもしれません。