屋久島日記29です。
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鹿が姿を消した道をさらに進んだ。人通りのない時間がしばらく続き、森の音しか聞こえなかった。
ふと、生き物の気配がして歩道から外れた場所に目をやると、別の鹿が静かに苔を食べていた。この鹿はこちらに気付いていないわけではなさそうだったが、おびえたり興味を示したりということとはかけ離れているようで、静かな時間を過ごしているらしかった。
木漏れ日に毛並みがつやつやと反射して、いつも栄養バランスのよい苔を食していることを物語っていた。ゆっくり歩いたり、止まったり、鹿は静かに森の奥に消えていった。